2011年03月26日

【特許】発明の捉え方について考える(2)

前回の続きです。


【特許】発明の捉え方について考える(1)
http://yu-individual.seesaa.net/article/191803361.html


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(3)発明者とは協力関係に立ち、話をじっくりきき真摯に対応する。


今後の特許出願業務においては、特に重要な項目になってくると個人的に思っています。なぜなら発明を多面的に捉えられれば、その分クライアントの想いを引き出しやすくなるのではないかと考えます。


また以前の特許業務とは違い、現在は1件の出願の重みが増したのではないかとおもいます。単なる下請業者ではなく、クライアントとタッグを組み、事業活性化の一部として特許戦略を弁理士が担当する関係になることが理想的ではないでしょうか。


そのためにはクライアントも特許戦略について弁理士に投げっぱなしではなく、共に発明を深め、かつ企業の無形財産として一つ一つの発明を蓄積することが大切だと思います。


またこの蓄積された発明の技術は、人材育成にも活用できるのではないかと考えています。世代交代が進む昨今、企業の技術力の進化を伝えるには、特許文献を用いることが有効ではないでしょうか。


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その他、参考になったコメントを列挙します。主にクレーム作成や進歩性についての考え方についての内容です。


○クライアントがメーカーならば、何を製造販売しているのかによって、クレームの範囲を変える。


○進歩性のある部分(より正確には進歩性と企業にとっての事業的価値とをあわせ有する部分)こそが出願する価値のある部分であり、発明の中核になる部分である。


○要素AとBとがどういう風に有機的なつながりを持っているかを適切に主張してあれば、進歩性は認められる可能性がある。


〇特許化するために結果的に当初と大きく違う発明になってしまうこともあるが、特許になった発明が、クライアントにとって価値があるものになればいいのではないかと思う。


最後になりますが、最近では弁理士業務も多角化してきました。しかし不変的な部分は必ずあるはずです。特許を専門とする弁理士にとっては、「発明を捉える」というミッションは不変的であり、クライアントに最も貢献できる場面ではないでしょうか。今後はそれを如何に分かり易く、かつ効率良く提供できるかが鍵になると思います。
posted by うっちー at 22:40| Comment(0) | 知財:特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月21日

【特許】発明の捉え方について考える(1)

本ブログで以前、「中空ゴルフクラブヘッド事件」を題材にして、発明の本質の捉え方について考えたことがあります。


【特許】発明の本質の捉え方が違うと…(「中空ゴルフクラブヘッド事件」から学ぶ)(1)
http://yu-individual.seesaa.net/article/182617395.html


【特許】発明の本質の捉え方が違うと…(「中空ゴルフクラブヘッド事件」から学ぶ)(2)
http://yu-individual.seesaa.net/article/183691260.html


今月配布された月刊誌「パテント」で、「発明の捉え方」の特集が組まれていました。各先生方の座談会です。


パテント 2011.3 vol.64
http://www.jpaa.or.jp/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/
※アーカイブにアップされるのは数か月先だと思います。


特に印象深いコメントをピックアップして、それぞれについて考えてみたいと思います。


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(1)出願前の調査については、調査を専門としない者が明細書作成手順の中で企業を満足させることのできるレベルの調査を行うことは難しい。


これは、たしかにその通りかもしれません。企業によっては商用DBを駆使して調査業務を内製したり、調査会社に外注したりしているところもあります。


しかし調査をしたから特許が取れるというわけではありませんが、調査結果を踏まえて発明を捉えることは非常に大切であり、特許を取れる可能性がある程度高まるのではないかと考えています。


したがって弁理士が行う事前調査は、例えば検索結果のヒット件数の上限を設定したり要約書の内容のみで類似するか否かを判断したりする、というような”ルール”を作ることで、安価でかつ短時間に効率よく行うことができると思います。


この調査結果から進歩性を主張し得るクレーム作成ができるばかりでなく、クライアントも特許出願に対する方針や見通しを立て易く、社内的にも(上層部にも)稟議しやすいのではないかと思います。


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(2)発明の把握の中には、技術の理解、技術思想としての理解、及び独占権としての理解などがある。


あらためて考えると確かにそうだな〜と納得しました。


まずは、発明者が創作した技術の理解ありき。どのような構造か?仕組みか?どんな部材や素材を使っているか?どのように動作するか?インプットしたら何がアウトプットされるか?等について、わからない場合はヒアリングしてしっかり理解することが大前提だと思います。


次に、技術思想としての理解、すなわち発明者の狙い、従来技術と違う点やすぐれている点、この発明から得られるメリット、この発明を基にした将来的事業構想等について把握することにより、クレームの範囲をやサブクレームの立て方の目安になると考えられます。


最後に、独占権としての理解。これは、クライアントが守りたいと願う領域と権利が取れそうな領域とのバランスを見極めることだと思います。つまりなんでもかんでも真似されないように広いクレームで権利化を図りたいと思う気持ちもわかりますが、進歩性や単一性をクリアできるクレームを構築する必要があります。


今までなんとなく職人芸的な仕事と思っていたことも、こうして詳細に分けて見直してみると、自分の思考の整理にもなって非常にいいです。



次回に続く・・・。
posted by うっちー at 21:03| Comment(0) | 知財:特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月10日

特許出願事務の業務フロー(2−1.国内出願処理編(@インターネット出願前の準備))

前回掲載した「特許出願事務の業務フローについて(1.受任処理編)」に引き続きです。


http://yu-individual.seesaa.net/category/9458037-1.html


今回は国内出願処理編です。明細書の作成終了後の業務フローです。
まずはじめに、@インターネット出願前の準備について整理します。


(1)明細書の方式チェックをする(特に注視する点をピックアップ)


 イ.願書
 
 
 (イ)国際分類(”/(スラッシュ)”の位置)
 
 
 (ロ)発明者情報(住所、氏名)
 
 
 (ハ)出願人情報(識別番号、住所居所、氏名名称、共同出願人の有無)    
 
 
 (二)費用(特に実用新案の場合は1〜3年分の登録料発生)
 
 
 ロ.明細書
 
 
 (イ)抜けや重複がないかどうか確認する。
    ※「自動付番マクロ」を使って一括付与も可能 
  
  
 (ロ)使用できない文字を使っていないか確認する。
    ※@(丸文字)、T・@(ローマ字大文字小文字)は不可
    

 ハ .図面  
     
     
 (イ)図面の抜けがないか確認する。
    ※【図面の簡単な説明】と比較するとよい   
 
 
 (ロ)解像度が小さすぎないか確認する。
    ※小さいと図面が小さくなってしまうため
    
 
(2)明細書をhtml形式に変換する


  明細書のワードデータで「名前と付けて保存」
  → ファイルの種類で「Webページ」を選択
  
       
ここまで来たら、次はAインターネット出願に入ります。


posted by うっちー at 23:50| Comment(0) | 知財:特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月06日

特許出願事務の業務フロー(1.受任処理編)

弁理士として特許出願の依頼を受けた後、例えばどのように受任処理するかを、今一度整理したいと思います。


(1)受任処理は、出願台帳、及び/または管理データベースに以下の主な項目を入力する


  イ.顧客整理番号(※番号の付け方は省略)
        
  
  ロ.受任した日
  
  
  ハ.目標設定日(ドラフト提出日、出願日等)
  
  
  二.その他(発明の名称、優先権の有無、新規性喪失の例外適用の有無等)
  

(2)出願書類を束ねるファイルを作成する


  ※必要に応じて、各種手続処理日を一覧できるようにしてもよい。
   
  
(3)各種データの保存場所(フォルダ)を以下の階層で作成する


  受任案件フォルダ(整理番号がわかるとベター)
 
   
  − 出願フォルダ ※将来的には、中間対応フォルダも作成予定
  
  
    − 客先資料フォルダ
    
    
    − 図面(イメージデータ)フォルダ・・・原案提出時または出願時の図面イメージデータを保存
          
    
    − その他フォルダ(提出済みドラフトや更新済みデータのバックアップ等)
 


次は、2.出願処理編を整理したいと思います。  

posted by うっちー at 22:39| Comment(0) | 知財:特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月21日

【特許】ビジネスモデルが「発明」に該当しないと判断された例(「双方向歯科治療ネットワーク事件」から学ぶ)(2)

前回、「双方向歯科治療ネットワーク事件」の概略と考察について掲載しました。


http://yu-individual.seesaa.net/article/186267375.html


そこで今回はもう一歩踏み込んで、なぜこの発明(歯科治療システム)が、拒絶査定不服審判で2条1項の「発明」の要件を満たさないと判断されてしまったのか?について確認したいと思います。


被告(特許庁)の主張のポイントは以下です。


○「・・・し」という方法的記載から、単に「手段」という文言が附加されただけだから、その主体が人ではなく機械であると解されるものではない。


○「A手段」の主体が人か機械かは、「A」の文言を解釈した上で、発明の詳細な説明等にA手段について定義があるかなどを踏まえて実質的に理解されるべきであるところ、歯科医師が主体でない、歯科医師の精神活動に基づくものではないなどの定義は記載されていない。


○発明の認定は、特許請求の範囲である記載に基づいて行われるものであり、発明の詳細な説明に記載された事項に基づいて行われるものではない。


○データベースに蓄積された所定の情報は、人間への提示という形で利用されることが特定されているにすぎない。


○コンピュータを道具として利用してデータベースの情報にアクセスし、ここで得られた情報を画面上で見て参考としながら歯科医師が「・・・を判定する手段」や「・・・を策定する手段」として機能するものである。


○発明の詳細の記載からは、歯科医師が主体として、歯科修復要求を判定したり、治療計画を策定したりすることが開示されている。


ん〜、これだけ言われると、確かに「発明」じゃなくって、人の行為(精神活動)かもな〜って
思えてしまいますね〜。

posted by うっちー at 00:05| Comment(0) | 知財:特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月16日

【特許】”人の行為”が含まれるビジネスモデルは”発明”か?(「双方向歯科治療ネットワーク事件」から学ぶ)(1)


審決取消請求事件
平成19年(行ケ)第10369号
「双方向歯科治療ネットワーク事件」
※平成20年6月24日判決言渡 


本判例はポイントは、ビジネス関連発明において、”人の行為”、すなわち人の精神活動が特許請求の範囲に含まれていることを理由に、「発明」に該当しないというべきではないと判決したことです。


また、上記判決をするにあたり、特許請求の範囲の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとの”特段の事情”があるため、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌するという「リパーゼ最高裁判決」を適用したことも、注目すべき点です。


つまり、ビジネスモデルにおいて、人の精神活動と言える行為(本判例では「・・・判定する手段」や「・・・策定する手段」)が入り込む余地は多々あるが、明細書の記載内容も含めて”システム全体”として見たときに、ハードウェアとソフトウェアが一体として用いられていることを明確に示せれば、「発明」として成立し得るのではないかと考えられます。

posted by うっちー at 23:19| Comment(0) | 知財:特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月01日

【特許】発明の本質の捉え方が違うと…(「中空ゴルフクラブヘッド事件」から学ぶ)(2)

前回は「中空ゴルフクラブヘッド事件」から発明の本質の重要性を学びました。



http://yu-individual.seesaa.net/article/182617395.html



他者を権利網に引っ掛けられるかどうかは、発明の本質の捉え方次第に思えます。



つまり出願時に発明の本質を広めに捉えるか?狭めに捉えるか?がキーポイントではないでしょうか。



このケースの場合、発明の目的は、



「金属性の外殻部材と繊維強化プレスチック製の外殻部材との接合強度を高めること」と出願時の明細書に記載されています。



部材については限定的に記載していますが、その他は上位概念で表現しているようですね。



また出願から登録までの間に、拒絶査定不服審判等を経由して出願当初は請求項5だったクレームを請求項1に補正して特許査定を得ています(IPDLの審査経過情報より)。



つまり”貫通孔を介して結合する”という構成が特許性を満たす必須の条件だったと考えられます。



このケースから、発明の本質はなるべく広めにとっておくことが無難であると言えそうです。



しかしあくまでも公知技術との”差”を明確にできるギリギリのところまで落し込まなければ、



進歩性がないと判断されるリスクがあると考えられます。

posted by うっちー at 22:38| Comment(0) | 知財:特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月26日

【特許】発明の本質の捉え方が違うと…(「中空ゴルフクラブヘッド事件」から学ぶ)(1)

以前、特許出願の準備をする前に、



発明の本質の整理」をしたほうがよいことを記載しました。



http://yu-individual.seesaa.net/article/181532188.html




では発明の本質の整理を具体的にどうやるか?



ということを考える前に、



発明の本質の”捉え方”について問題になった「中空ゴルフクラブヘッド事件」について軽くふれたいと思います。



まず争点となったそれぞれの技術的特徴の概略を簡潔に言うと、



特許発明品では、



複数の『貫通穴』がある金属製外殻部材にプラスチック製の『縫合材』を交互に通して、



この縫合材と同質のプラスチック製外殻部材とが面して結合しています。



すなわち、同質の縫合材がプラスチック製外殻部材に一定の間隔毎に接するため、



金属製外殻部材との接合強度が高まるというものです。



一方、模倣品(イ号物件)では、



『透孔(≒貫通孔)』を介して『短小な帯片』がそれぞれの外殻部材の外側面に接するように階段状に折り曲げることで、



外殻部材同士を結合しています。



したがって模倣品における『短小な帯片』が、



特許発明品における『縫合材』に該当するか否か?(すなわち特許発明の技術的範囲に属するか否か?)、



該当しないならば均等論の5要件(特に本質的要件)を充足するか否か?を争いました。



結論としては、



『縫合材』は発明の本質ではなく



均等論の5要件を充足して均等侵害が認められました。



しかしもし知財高裁で『縫合材』が発明の本質部分として判断されたら、



非侵害の判決がでていることになります。



このように発明の本質をどう捉えるかによって、



判決のみならず審査においても変わってくると考えられるため、



発明の本質の整理は非常に重要な作業になります。


posted by うっちー at 23:49| Comment(0) | 知財:特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月19日

【特許】出願の準備をする前にすること


まず「特許出願の準備」とは、出願書類の作成をすることを示します。



出願書類とは、特許請求の範囲、明細書、必要な図面、及び要約書です。



すなわち特許請求の範囲等の作成に入る前に、



特許を取れる”筋書き”が完成していることが好ましいです。



ここで「筋書き」とは、先行技術と対比して特許性(主に進歩性)を主張し得る有効な権利範囲の構築が該当します。



ちなみに、徐放性ジクロフェナクナトリウム製剤事件(東京地裁平8(ワ)14828号)では、



特許発明の本質的部分か否かは、



特許発明を先行技術と対比して課題の解決手段における特徴的原理を確定した上で判断すべきと判示していることから、



課題とその解決手段とにより発明の本質的部分が確定されると考えられます。



したがって、特許出願の準備をする前に行うことは差し当たり以下の2点と思われます。



@発明の本質の整理



A先行技術文献の調査


posted by うっちー at 23:15| Comment(0) | 知財:特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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